授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
意を決して伝えたつもりだったのに、父は、ほぅ、とただ低く応じるだけだった。予想外にあまり表情が変わらなかったのを見て、本当に関心があるのか傍目にはわかりづらくなる。数多受けた就職面接でもこんなにたちの悪い圧迫面接のようなものはなかった。父の無表情にこの威圧感。娘の私でさえ、自分の意見を述べる気力が根こそぎ奪われるようだった。

「黒川慧介。三十三歳。ウォルナーズホテルグループ代表取締役社長の嫡男で現在、坂田法律事務所所属の弁護士。うん、家柄は問題ない。むしろ好条件なくらいだ」

黒川さんのこと色々調べたんだ……。

父なら、そんな個人情報くらい調べるのは簡単だ。怖いのはどこまで知っているのかわからないというところ。そう思うと一気に顔が強張る。

「しかし、決定的に残念な点がある。それは彼が弁護士だということだ。絶対に認めん」

あぁ、やっぱり……。

わかっていたけど、改めてそう言われてしまうと言葉に詰まる。父が納得しなくとも、今日の話し合いは穏便に終わらせたい。

「お父さんが弁護士嫌いなのは……お祖父さんが弁護士に裏切られたからなんでしょう?」
< 176 / 230 >

この作品をシェア

pagetop