授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
車を降りて、店の前に立つとすぐに弥生さんと目が合った。

「菜穂ちゃん!?」

おずおずと店の中へ入ると、お客さんもまばらにいる中、弥生さんにギュッと抱きしめられた。

「大変だったわねぇ、元気なの? ちゃんとご飯食べてる? 眠れてる? なんだかやつれたんじゃない?」

矢継ぎ早に言葉を並べられると、いかに私のことを気にかけてくれていたかがわかってくしゃりと顔が歪む。

「平気です。あの、ご迷惑をお掛けして……」

無事を確認するようにペタペタと私の顔を手であちこち触りながら、弥生さんは私を涙目で見上げてくる。そんなふうにされると私もたまらなくなって、ついつい泣きそうになってしまう。

言葉には出さないけれど、厨房から清隆さんと光弘さんまで顔を出して心配げな視線で私を見つめている。

「この前、菜穂ちゃんのお父さんが朝見えてね……『うちの娘が世話になった。諸事情で仕事ができなくなったから辞めさせて頂きたい』っていきなり言われてねぇ……連絡もつかないし、また家で倒れてるんじゃないかって心配で心配で」

今にも取り乱しそうな弥生さんに「私は大丈夫だ」と伝えたくて何度も何度も背中をさする。
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