授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
あんパンの入った袋を受け取ると、黒川さんはにこりと軽く手をあげて店を後にした。

なんか、すごくオーラのある人だった……!

あんパンひとつの会計でなんでこんなに緊張してるんだろ。

「ちょっと~菜穂、“黒川さんステキ!”ってめちゃくちゃ顔に出てるよ」

「へっ!?」

聖子との付き合いは長い。だから私の些細な仕草や顔色ですぐになにを考えているかバレてしまうのが玉に瑕。

黒川さんって芸能人? モデル? ステキな人だったなぁ……。

だからつい我を忘れて見惚れてしまったのは否めない。

年は三十手前くらいか、同年代のサラリーマンと比べれば格段に落ち着いていて大人の余裕があった。余裕というか艶やかと言うべきか……。

あ~黒川さんはシンプルに、格好いいっ!

ガチッと音がするほど強く奥歯を噛んだ。さもないとうっかり声に出してしまいそうになる。

「黒川先生はね、ここの店……ううん、この商店街の恩人なのよ」

「恩人?」

「そ、近所にある坂田法律事務所のエリート弁護士さんなの。も~ステキでしょ? 私の密かな目の保養」

厨房にいる光弘さんに聞こえないように聖子がそっと囁く。
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