授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「一年前ね、ある不動産会社が都市開発だって言って商店街の土地を買い上げようとしたの、もちろんうちの店も立ち退き対象になってさ、あのときは大変だったよ」

「え、立ち退き……そんなことがあったの?」

初めて聞く話だ。一年前はちょうど仕事も軌道に乗ってきたところでときどき聖子とも会ってお茶をしたりしてたけど、仕事が忙しい自分のことで気持ちに余裕がなく、いつもニコニコしている聖子がそんな悩みを抱えていたなんて知らなかった。

「聖子……私、全然知らなかったよ、気づいてあげられなくてごめん」

「もう、別に菜穂に謝って欲しいなんて思ってないし、それにこうして商店街もうちの店も潰されずに済んだんだから、それでね、そのとき――」

聖子の話によると、その不動産会社はかなり無理やりなやり方で立ち退きを要求してきたようで、商店街の人たちもどんなに高額な立ち退き料を積まれても絶対に動かないと一致団結して応戦したらしい。

しかし不動産会社から訴訟を起こされ、窮地に立たされたとき黒川さんが弁護士として法廷に立ち、この街に商店街の必要性と不当な立ち退き要求に異議を申し立てたところ、その不動産会社が実はブラック企業だったことが明るみになりあっけなく敗訴したという。

このお店があるのは、黒川さんのおかげだったんだ……。

弁護士さんかぁ、かっこいいな。

コートを着ていたから見えなかったけれど、きっとあの胸には弁護士バッジが……はぁ、見てみたかったなぁ。
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