授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
そうだ! まだ船のタラップは桟橋にかけられているはず。このまま黙って船から降りることも……できる?

「菜穂さん」

ふと浮かんだよからぬ考えに思いを巡らせていると、いきなり背後から声をかけられてビクリとする。

「ッ!? い、板垣さん……」

振り向くと、私のことを探していたようでニコニコしながら板垣さんが歩み寄ってきた。

「パーティーが始まるまで、屋外デッキで気分転換しませんか? 会場はなんだか騒がしくて落ち着かないでしょう?」

人が増えてきたから空気も薄い気もする。先ほどから息苦しく感じていたのはそのせいだ。だから板垣さんは気を遣って私に声をかけてくれたのだ。船からは出られないけれど少しでも外の空気が吸えるなら、と柔らかく微笑みかける板垣さんにコクンと頷いた。
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