授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
弁護士バッジは太陽に向かって伸びる生き様から「自由と正義」を象徴する花としてひまわりがモチーフとなっている。またその花の中心には小さく天秤の絵が刻まれていて、こちらは「公平と平等」を表している。そのバッジを身に着けて、人権擁護と社会正義のために法廷で凛々しく立つ黒川さんの雄姿を想像すると、思わず熱いため息が出てしまう。

「こりゃ重症な黒川症候群だわ……」

「え? 黒川、症候群? なにそれ」

「あまりにも黒川先生がステキすぎて魂抜かれたみたいにぼーっとしちゃうっていう一瞬で陥る恐ろしい病よ。なんてね」

いたずらっぽくニッと笑って私の顔を覗き込まれると、なんだか気恥ずかしくなって口ごもる。

「べ、別にぼーっとなんか……」

して……たよね、きっと。はぁ、仕事はじめ初日からこんなことじゃだめだなぁ。

「大丈夫よ、ここは菜穂が前に勤めてた会社みたいな堅苦しい社則なんてないし、肩の力抜いて。ここの商店街のお店の人、みーんな結構マイペースだし、ね?」

「うん、ありがと」

今朝からずっと気を張っていたこと、聖子にはバレてたんだ。

心の友にはなにも隠せないね。

本当は緊張して、さっきも店頭にパンを並べる手元さえ少し震えていた。聖子に明るく笑顔でそう言われると、スッと自然と全身の力が抜けていった気がした。
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