授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
口調を荒げる板垣さんに動じることなく、黒川さんは落ち着き払っている。返ってその余裕な態度が気に食わないのか、黒川さんへ向ける視線の鋭さが増した。

「松下検事は俺を認めて彼女との婚約を承諾したんだ。いまさら――」

「ああ、それなら……松下検事は怒り狂ってたぞ? 信頼していた男に侮辱されたってね」

「え……?」

板垣さんの顔色がサッと変わるのを見て、黒川さんはポケットからスマホを取り出した。

「これを聞けばわかる」

【そうじゃありませんよ。松下検事は事案を選り好みする人でね、あんな小さな窃盗未遂事件のことなんて、どうせ報告したところであの人は気にかけない――】

スマホから聞こえてきたのは、ついさきほど板垣さんが口を衝いて出た父への侮辱ともとれる発言を録音したものだった。

「な、なんで……」

なぜ自分の言った事が黒川さんのスマホから?と板垣さんは頬を引きつらせたまま、呆然としている。

「まぁ、種明かしをすると……これだ」

黒川さんが私のショールに手を伸ばし、何かを取り外すと手のひらを広げて見せた。

「盗聴器……?」

やられた、と板垣さんは舌打ちをし、苛立った様子で頭をガシガシと掻いた。

「松下検事はここでの話を全部聞いたっていうのか?」

「ああ、さっき音源を聞いてもらったからな。君に本当のことを聞き出すために、松下検事が姿を現すのも時間の問題だ。あ、警視総監とご一緒にね」

「なんだって? くそ……余計なことを」

いつの間に盗聴器なんか……。

もしかして、さっきぶつかった振りをして私のショールにつけた?
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