授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「いやいや、私は決して息子さんのことを怒っているわけではない。黒川君に教えられるまで何もかも知らなかった、浅はかな自分を腹ただしく思っているだけです」

表情は穏やかだけど、目は全然笑っていない。こんな父の顔を見るのは初めてだ。

「板垣」

「は、はい!」

低い声で父に名前を呼ばれた板垣さんがピシッと背筋を伸ばして顔を上げる。

「ひとつ聞きたいことがある。録音されていた浅草のはなみち商店街の空き巣事件とはなんのことだ? しかも娘が巻き込まれて、それを助けたのが黒川君だと娘は言っていたようだが?」

私に盗聴器を取りつけてからの録音だとすれば、父は板垣さんと交わした全ての会話を知っているということになる。

「私の娘が事件に巻き込まれていたと知っておきながら、どうせ小さな窃盗未遂事件だから気にかけない、そう思って報告しなかったのか? なんだ、さっきからだんまりじゃないか、それでは話が見えんぞ? 何か言ったらどうなんだ、言い訳でもなんでも聞こう」

もう言い逃れできないとわかっていてそんなふうに言う父は、本当にえげつない。

板垣さんは空気ごと吐き出すように深く息をして、観念した顔でその重たい口を開いた。
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