授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
婚約が破断になると聞いて、板垣さんの父は顔色を変えて慌てて食い下がる。けれど、父は首を横に振るだけだった。

「本当のことが聞けて良かった。私は危うく甲斐性のない若造に娘を差し出すところだった……これも黒川君のおかげだ」

「いえ、俺はなにも……ただ、真実を知ってほしかっただけです。真実を追求することは信念でしょう? お互いに」

黒川さんが右手を差し出すと、父は目尻に皺を寄せてその手を取り、ガッチリと握手を交わした――。


黒川さんと父が肩を並べている姿なんて想像もできなかったけれど、今、それが現実となっている。

板垣親子は父から言い渡された婚約破談を渋々受け入れると、そそくさとデッキを去っていった。板垣警視総監は裏で検事総長である父とパイプを繋げようと企んでいたようで、最後に「まったくお前は使えないバカ息子だ!」と暴言を吐いていた。

あんな裏表のある親子の家に嫁入りするところだったんなんて……ゾッとするよ。

これで板垣さんとの婚約は免れたけど、黒川さんと結婚する許しはまだ父から出ていない。

「お父さん、私、弁護士を目指していたお父さんが検事になった理由をずっと考えていたの、家族に辛い思いをさせたくなかったから……」

すると父は、はぁ、と小さくため息をついてやんわりと笑った。
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