授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「ふふ、あんなふうに笑ってるお父さん見たの久しぶりです」

黒川さんに向き直った瞬間。

「菜穂」

ふたりきりになったこのときがようやく来た。と言わんばかりの性急な口づけをされて言葉を呑み込む。私も嬉しくて、そのキスに応えるように彼の背中に腕を回してギュッとする。

「やっと君を捕まえた。君が忽然と姿を消したあの日、実家に連れ戻されたんじゃないかって直感したんだ。所長に松下検事の住所を聞き出して……。正直言うと、菜穂に会えなかった間、ずっと気が狂いそうだった」

キスを解くと、紅潮した私の頬を何度も撫で、その存在を確かめるように再び唇を塞がれる。

「ん……っ、黒川さ……あの」

「ちょっと黙って、俺に菜穂を感じさせてくれ」

熱い吐息を交わし、唇から聞こえる甘い水音に朦朧としてくる。

「菜穂、船から降りたいか? 走ればまだ間に合う」

「いえ、走って降りる時間さえ私には惜しいんです。今は、黒川さんとこうしていたい」

恥ずかしげもなく大胆なことを言ってしまった。けれど、黒川さんは私の答えを聞いて満足げに笑んだ。

「菜穂が俺と同じことを考えていたようで安心した。じゃあ、ずっとここでこうしていようか、寒い?」

彼に抱きしめられていると寒さなんか吹っ飛んでしまう。むしろ身体が火照って暑いくらいだ。

「平気です。あ、船が出たみたいですね」
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