授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「すぐに帰ってくるって、ここにですか? 事務所じゃないんですか?」

目をぱちくりさせている私に黒川さんが向き直ってニッと笑う。

「実は今日、俺も午後は休みなんだ。最近仕事を詰め過ぎて所長から午後は休めって言われてる。だから帰ってきたら君の好きなところへ行こうか。出かけたほうが君もリフレッシュできるだろ?」

え、嘘! 黒川さんとお出かけデート! 嬉しいっ!

覚えず両手で肩を抱いて身体を揺らすと、黒川さんがやんわりと唇を弓型にした。

「じゃあ、行ってくる。いい子で待ってるんだぞ?」

「あの、いったん家に戻りたいんですけど……」

デートをするならちゃんとしたお出かけ用の服を着て、髪の毛も化粧もバッチリにしたい。昨日は必要最低限の物しか持ってこなかったせいで、あいにく持ち合わせがない。

「ああ、ここのマンションはオートロックになっているから施錠の必要はないが、部屋には入れなくなる。だから仕事が終わり次第、君の家に迎えに行くよ。また連絡する」

「わかりました。行ってらっしゃい」

唇を寄せ合い挨拶のキスを交わす。まるで映画かなにかのワンシーンのようにごく自然な動きをした自分に驚いてしまう。

彼が部屋を出た後もその余韻から抜け出せず、そのこそばゆさに口元を緩めた。

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