授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「お母さん、聞いて! 菜穂が店を手伝ってくれるって! それでね、引っ越しもしなきゃならなくって、二階使ってもいいよね?」

聖子がビッグニュースと言わんばかりにはしゃぐと、それを聞いた弥生さんは目を丸くして「えっ? 本当? 菜穂ちゃん可愛いし、愛想もいいから助かるわ~。お父さん! お父さんってば! 聞いてちょうだい!」と瞬く間に私が店で働くという情報がさっそく店中に広まった。

ベーカリーカマチは聖子の曽祖父の代から続く老舗のパン屋で、下町浅草の“はなみち商店街”にひっそりと佇んでいる。都心にあるような今時のお洒落なベーカリーショップとは違い、煉瓦造りのレトロ感漂う小さな店だけど、素朴でどことなく懐かしい感じのする昔ながらのパン屋だ。

リーズナブルな価格で手軽に美味しいパンが買えるということで、客層は近隣の学生さんが主だ。朝から元気ある若い学生さんに囲まれて、店の雰囲気も活気があって明るい。そして今年になってからイートインコーナーを増設したことで客入りはますます上々のようだ。

「菜穂、自分から誘っておいてなんだけど……本当にいいの? 一度実家に帰って態勢整えることもできるんだよ? お父さん心配しない?」

喜ぶ弥生さんを横目に心配げにファイナルアンサーを聖子から問われる。

「実家には帰らない。大丈夫、色々ありがとう」
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