授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
何度も息を呑み絶え絶えに尋ねる。黒川さんはしばらく沈黙していたけれど、ようやくその重い口を開いた。
「一年前、はなみち商店街の土地を買い上げようとしていた不動産会社に裁判を起こされた話しは知ってるだろ?」
「はい」
「あの後、その不動産会社は数か月後に倒産したんだ。元々素性の悪い会社だったから買収されることもなく、多くの社員が路頭に迷う結果になった。空き巣に入った男は……地上げ担当の営業部長だった男だ。一年前とはずいぶん風貌が変わっていたから一瞬わからなかったが……逆恨みによる犯行だろうな」
ベーカリーカマチに入った犯人の顔は正直、暗がりであまりよく見えなかった。男の人だということだけはわかったけれど、まさか、黒川さんと関わりのあった人だったなんて。
「弁護士は法律を盾に人権を守ることはできても……犯罪者を有罪にすることはできない。空き巣犯が勝手口から飛び出してきて君の姿を見たとき……怒りで我を忘れてしまいそうになった。けど、結局何もできなくて……俺は無力な人間だ」
「そんなことないです! だって、ちゃんと一本背負いして捕まえてくれたじゃないですか」
そう私が声をあげると、黒川さんがくしゃりと顔を歪め、しがみつくようにして私の身体を掻き抱いた。
「大切な人を……失いたくない」
「一年前、はなみち商店街の土地を買い上げようとしていた不動産会社に裁判を起こされた話しは知ってるだろ?」
「はい」
「あの後、その不動産会社は数か月後に倒産したんだ。元々素性の悪い会社だったから買収されることもなく、多くの社員が路頭に迷う結果になった。空き巣に入った男は……地上げ担当の営業部長だった男だ。一年前とはずいぶん風貌が変わっていたから一瞬わからなかったが……逆恨みによる犯行だろうな」
ベーカリーカマチに入った犯人の顔は正直、暗がりであまりよく見えなかった。男の人だということだけはわかったけれど、まさか、黒川さんと関わりのあった人だったなんて。
「弁護士は法律を盾に人権を守ることはできても……犯罪者を有罪にすることはできない。空き巣犯が勝手口から飛び出してきて君の姿を見たとき……怒りで我を忘れてしまいそうになった。けど、結局何もできなくて……俺は無力な人間だ」
「そんなことないです! だって、ちゃんと一本背負いして捕まえてくれたじゃないですか」
そう私が声をあげると、黒川さんがくしゃりと顔を歪め、しがみつくようにして私の身体を掻き抱いた。
「大切な人を……失いたくない」