妖しな嫁入り
「俄然、忍ばせてでも持って行きたくなった」
「安心しろ。刀などなくとも、君のことは俺が守ろう」
「そもそも一番危険な妖と同じ傘の下」
攻防を続ければ日が暮れてしまう。それでは狩りに出ていた頃と変わらない。
私は、明かるい世界を見てみたかった。だから、だから……甘んじて耐えるしかないのだ。必死に自分へと言い聞かせる。
私は朧の隣を受け入れた。無論、刀無しで。
そうしてひと悶着を終え、ようやく出発にこぎつけた。ただ外出するだけのはずが、随分と長かったように思う。それでも依然として外は雨のままだ。
「もっとそばへ寄ったらどうだ。肩が濡れるぞ」
「気にしなくていい。むしろびしょ濡れで構わないから」
そんなことを言えば返答の代わりに肩を引き寄せられ実力行使。屋敷を出て間もないというのに、早速自らの判断を後悔していた。刀は無理にしても何か刃物、例えば包丁あるいは陶器の破片くらいは所持しておくべきだったか。
小さな傘の下、ようするに至近距離に朧がいる。少し顔を上げるだけで朧がどんな表情をしているか窺えるほどに……つまり奇襲の好機! とはいえ私は残念なことに武器になる物を一切所持していない。こうなったら、来るべき日に備え目的を切り替えよう。
私はいつかこの妖を殺す。そうなれば望月家へ戻るのだから地理を把握しておいて困ることはない。そう、これは目的のための調査。だからこうして甘んじて大人しくしているのだと。
――ということを隣の妖は理解しているのだろうか。理解しているのなら私を連れだすはずがない。
「安心しろ。刀などなくとも、君のことは俺が守ろう」
「そもそも一番危険な妖と同じ傘の下」
攻防を続ければ日が暮れてしまう。それでは狩りに出ていた頃と変わらない。
私は、明かるい世界を見てみたかった。だから、だから……甘んじて耐えるしかないのだ。必死に自分へと言い聞かせる。
私は朧の隣を受け入れた。無論、刀無しで。
そうしてひと悶着を終え、ようやく出発にこぎつけた。ただ外出するだけのはずが、随分と長かったように思う。それでも依然として外は雨のままだ。
「もっとそばへ寄ったらどうだ。肩が濡れるぞ」
「気にしなくていい。むしろびしょ濡れで構わないから」
そんなことを言えば返答の代わりに肩を引き寄せられ実力行使。屋敷を出て間もないというのに、早速自らの判断を後悔していた。刀は無理にしても何か刃物、例えば包丁あるいは陶器の破片くらいは所持しておくべきだったか。
小さな傘の下、ようするに至近距離に朧がいる。少し顔を上げるだけで朧がどんな表情をしているか窺えるほどに……つまり奇襲の好機! とはいえ私は残念なことに武器になる物を一切所持していない。こうなったら、来るべき日に備え目的を切り替えよう。
私はいつかこの妖を殺す。そうなれば望月家へ戻るのだから地理を把握しておいて困ることはない。そう、これは目的のための調査。だからこうして甘んじて大人しくしているのだと。
――ということを隣の妖は理解しているのだろうか。理解しているのなら私を連れだすはずがない。