二度目の結婚は、溺愛から始まる


「蓮、手を離して」


手を繋ぐ以上のことを何度もしているけれど、心臓が飛び跳ねて落ち着かない。
引きずられるようにして歩きながら、手を離してくれと訴えた。

しかし、蓮はシラフにしか見えない顔でさらりと拒絶した。


「久しぶりに飲み過ぎたから、まっすぐ歩けない」

「十分まっすぐ歩いていると思うけど」

「そんなことはない。ふらついてる」


そう言うなり、いきなり身体を傾け、わたしを壁際へ追い詰めた。

肘をついて囲い込み、ゆっくり顔を近づけて……首筋に鼻を埋め、唇を押し当てる。


「酒も刺身も美味かったが……ずっと、別のものが欲しくてしかたなかった」


「蓮っ!」


家の中には、わたしたちのほかには志摩子さんと寝ている祖父しかいない。
誰にも見られないとわかっている。


(わかっているけれど……廊下でこんなことするなんて、無理よっ!)


「だ、ダメっ! やめてっ!」


もがきながら蓮の胸を叩いたが、やめてくれる気配はない。
それどころか、太ももを上へと辿る手が、ワンピースの裾をまくり上げていく。


「そんな顔で、ダメと言われても興奮するだけだ」

「廊下で、こんなことするなんてっ……」

「こんなことって?」


囁かれると同時に耳を食まれ、泣きそうになりながら叫ぶ。


「わかってるくせにっ!」

「この状況で、理性を保てる男がいるとは思えないな……」

「え……? きゃっ!」


ぼそっと呟いた蓮は、わたしの身体を両腕ですくい上げた。

そのまま客間へ運び込み、下ろすと同時にワンピースの背中のファスナーを引き下げる。


「蓮っ! な、何するのっ!」


慌てて足元に落ちたワンピースを引き上げようとしたが、両腕を掴まれて身動きできない。
蓮は、下着姿のわたしを見下ろし、不満げに呟いた。


「白か……」

「…………」


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