二度目の結婚は、溺愛から始まる

遠慮がちに唇を重ねていたのは、最初だけだ。
蓮の膝の上に載せられて、誘惑と欲望に負けて唇を開く。

口内へ熱い舌が侵入するとあまりの気持ちよさにクラクラした。

結局は、蓮の思うとおり――キスに応えてしまう。

抗えない自分にも、自分をそんな風にしてしまう蓮にも、腹が立つ。
けれど、こんなに気持ちのいいキスをやめるなんて不可能だ。


「今夜は、ここまでにしておく。これ以上続ければ……我慢できなくなる」


あとほんの何秒かで、お互い我慢できなくなるというところで、蓮はキスをやめた。

濡れた唇を見ていたら自分からキスをしてしまいそうで、目を逸らす。


「……シャワー、使う?」

「いや。家に寄ったときにしたから、明日の朝でいい。顔を洗って、ある程度酔いを醒ましてから寝たいが……」

「この部屋は、ゲスト用のバスルームに繋がっているの。こっちよ」


立ち上がり、蓮をバスルームに案内したわたしは、自分が着替えを持って来ていないことに気がついた。下着はもちろん、寝間着もない。

布団の上に置かれているシースルーの赤い襦袢を着る勇気も、ない。

わたしの視線の先を辿った蓮は、くすりと笑ってビジネスバッグと一緒に部屋の隅に置いた紙袋を手渡した。


「椿の着替えも一応持ってきた」


袋の中には、下着とカットソー、パンツなどが入っている。
下着の色は「赤」だけれど、文句を言うべきではないだろう。

持つべきものは、気の利く元夫だ。


「それから……『あれ』を着たくないなら、俺のTシャツを着ればいい。俺に用意されたのは、普通の浴衣のようだから」

「……ありがとう」

「どういたしまして」


にやりと笑った蓮は、憎たらしいけれど……。


相変わらず、完璧だった。



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