二度目の結婚は、溺愛から始まる
「それは、コンプレックスがあるから?」
「それも……あると思います」
あまり女性らしいとは言えない身体つきをわたしが気にしていたことは、征二さんも知っている。
その点については、蓮と付き合うようになってから改善されたけれど、やっぱり「女性らしい」という形容詞からは程遠いままだ。
「それと……年齢が気になる? 雪柳さんは、五つ上だっけ? お兄さんと同じ年だったよね?」
「はい」
「そうだなぁ。雪柳さんは実際の年齢よりも大人だし、椿ちゃんは何だかんだ言ってもやっぱりお嬢さまだからね。世間ずれしていなくて、実際の年齢よりもちょっと幼い。五つ以上の差を感じるかもしれないね」
「やっぱり、子どもっぽいんですね? わたし……」
周囲の人のほとんどに、そう思われているとわかっていたけれど、面と向かって言われると落ち込む。
「そうだね。でも」
あっさり肯定した征二さんは、言葉を続けた。
「雪柳さんは、必死に追いつこうとして背伸びする椿ちゃんが、かわいくてしかたないんだと思うけどね?」
(確かに、昔は追いつこうと必死だったけれど、いまは背伸びなんかしていないもの)
大学生だった頃、結婚したての頃とは違うのだと、ついむきになって反論する。
「わたし、もう三十なんです。確かに、むこうでは子どもにしか見えないって言われていたし、総レースの下着も持っていなかったけれど、十分大人なんです! 『かわいい』より、色っぽいとか、セクシーだとか、そういう風に思われたい年頃で……って、征二さん! ここ、笑うところじゃないですっ!」
言い募るわたしを前にして、征二さんが噴き出した。
「ごめん、ごめん。雪柳さんが、椿ちゃんにハマるのもわかるなぁ……」
「ハマるって……」
「椿ちゃんはとてもユニークだからね。一度好きになったら、コーヒーみたいに、なくてはならない存在になるだろうね」
「褒められているのか、貶されているのか、わからないんですけれど……」
「そうかな? そんな相手に巡り合えるなんて、滅多にないことだよ」
「だからといって……上手くいくとは限らないですよね?」
世の中の最終的に離婚を選んだ夫婦の大半が、最初から離婚するつもりで結婚したわけではないだろう。百パーセントではないにしても、結婚するならこの人だと思い、上手くやっていけると信じて、結婚したはずだ。
わたしのように。
「お説教くさいことを言うのは柄じゃないけど……どんな結婚でも、最初から上手くいくわけじゃないさ。大事なことは、上手くいくかどうかじゃない。上手くいかなくても、二人で乗り越えようと頑張れるかどうかなんだと思うよ」
征二さんは、自分たち夫婦もしょっちゅう喧嘩していると苦笑いした。
「結婚して夫婦になれば、いい時だけでなく、悪い時も一緒に過ごすことになる。必然的に相手のいいところだけでなく、悪いところも見えてしまう。だから、嫌になることもあるかもしれないし、幻滅するかもしれない。でも、それはお互い様だ」
(でも……いつだって蓮は完璧で、嫌なところなんかない。それに比べて……)