二度目の結婚は、溺愛から始まる
「いまいるパートさんやアルバイトは、みんな長く働いてくれている人たちばかりだから、安心してホールを任せられる。二人には、今週中、俺がやっている仕事を覚えてもらって、取り敢えず来週から引き継ぎたいんだけど……どうかな?」
「はい! それで行きましょう」
「頑張ります。でも……征二さんのお休み、本当に二日だけでいいんですか?」
奥さんのことが心配で、毎日でもお見舞いに行きたいのではないかと思ったが、征二さんは「とんでもない」と首を振った。
「週に二日の休みが確保できれば十分。それに、椿ちゃんにも海音ちゃんにも、自分たちの生活を犠牲にしてまで手伝ってほしくないんだ。無理をすればどこかにしわ寄せが来るからね」
「犠牲だなんて! むしろ、勉強させてもらうようなものなのに……」
征二さんを手助けしたい気持ちが一番強いのはもちろんだが、征二さんの持つバーテンダーとしての知識や技術を学び、吸収したいという不純な動機もある。
学生の頃は、アルコールドリンクにまで手を出す余裕がなかったし、ジーノの店でも経験を積めなかった。
メジャーなカクテルくらいなら作れるが、お客さまを喜ばせるほどのレベルではない。
「そのことだけど……知り合いのバーテン経験者にヘルプを打診中なんだ。俺が椿ちゃんに直接教えられる時間は限られているし、椿ちゃんが慣れるまでサポートしてもらおうと思って。京子の店で、学生時代から八年くらい働いていたヤツだから経験は十分ある」
「その人、どこのお店で働いているんですか?」
「いや、いまはバーテンはしてないよ。本業の収入が安定しなくて、学校を卒業してからもダブルワークを続けていたんだけれど、どうにか本業一本で食べて行けるようになって、スッパリ辞めたんだ。その後は、京子の店に客として通ってくれていてね。京子が店を閉めてからは、こっちに寄ってくれている。なかなかユニークな人物だから、椿ちゃんと気が合うんじゃないかな?」
「それって……褒めてます? 貶してます?」
「ユニークっていうのは褒め言葉だよ? 椿ちゃん。アイツは、社交的な性格だし、面倒見もいいからやりやすいと思う。椿ちゃんなら、雪柳さんで免疫ができてるからアイツの顔にもうっとりしないだろうし。ところで……雪柳さんとは、ちゃんと話せた?」