二度目の結婚は、溺愛から始まる
心配そうな顔をする征二さんに、大きく頷く。
「大丈夫です」
今朝はゆっくり話す時間もなかったけれど、昨日一日で、わたしと蓮の距離は縮まった。
これまでにないくらい、近い距離――手を伸ばせば届く距離にいる。
いまの関係がこの先もずっと続くのか、続けられるのかは、わからない。
ただ、どんな結末になっても後悔しないように、傍にいたいという想いを大事にして、一日ずつ積み重ねていくしかないのだと思う。
離れそうになったら手を繋ぎ、並んで歩いていれば、相手を見失うことも迷子になることもない。
「それならいいんだけど」
「あの……雪柳さんって、もしかして椿ちゃんの旦那さん? 結婚したの?」
「え、ええと……」
わたしと蓮が出会った頃、海音さんはすでにヘルプで来ることはなくなっていた。
征二さんが、わざわざわたしたちの事情を話したとは思えないし、詳しい経緯は何も知らないはずだ。
(べつに、疚しいことは何もないけれど……でも……)
結婚して、離婚した元夫と現在同居中。
事実をありのまま言葉にするとちょっと、いや、かなりおかしな関係に聞こえるかもしれない。
何と説明すればいいか悩むわたしを差し置いて、征二さんがそのままを暴露した。
「雪柳さんは、椿ちゃんの元旦那さんだよ。わけあって離婚したものの、再会して、いまは恋人同士として同棲中」
「せ、征二さんっ!」
まちがいではないが、その通りだとも言えない。
海音さんは眉根を寄せて首を傾げたが、ざっくりまとめた。
「いろいろあったけれど、いっそう絆が深まって復縁したということ?」
「そういうこと。なんと、二人はこの店で出会ったんだよ! 椿ちゃんは、お客さんだった雪柳さんにひと目惚れ。しばらくアプローチできずにいたんだけれど、ラテアートをきっかけに彼の心を鷲掴みにしたんだ」
「きっと、すごーくすてきなラテアートだったんでしょ?」
さぞかし芸術的なものだと思っていそうな海音さんに、「犬」――しかも、3Dの犬がカップから覗いているラテアートだったとは、言いにくい。
「それは……」