二度目の結婚は、溺愛から始まる


「お邪魔しまーす」

「遅くなってごめんね!」


やって来た二人は、両手に重そうなデリバリー用のクールバッグをぶら下げている。


「よっ、椿!」

「フードメニューの試食、椿も一緒にしてくれる? 外国人のゲストも多いから、日本人の舌だけじゃ、ちょっと不安で」

「わたしだって、日本人よ」

「元はそうだけど、すっかりあっちの味に染まってるでしょ?」

「まあ、それは……否定できないけど」


紅さんが用意してくれた紅茶で喉を潤し、紫ちゃんを合間合間にあやしながら、会場デザインの最終案を確認し、素材や色を決める。

涼と愛華は、蒼と紅さん、わたしにフードメニューを試食させ、味や色どり、素材などの意見を聴く。

あっという間に二時間が過ぎ、うつらうつらし始めた紫ちゃんは、紅さんが寝かしつけに連れていった。


「どちらも、あとは発注するだけね」

「椿は全部外注するのか? それとも……」

「大きなものは頼むわ。でも、子ども用のゲームで使う猫グッズ、一応用意はしてみたんだけど……やっぱり蒼に作ってもらおうかなと思って」


猫の置物や猫をモチーフにしたものなど、いくつか使えそうなものを購入してみたけれど、どこかしっくりこなかった。

実際にこの家に住み、庭を知り尽くしている蒼なら、違和感なく溶け込む「猫」を作れるはずだ。


「えっ! 俺?」


まさか指名されるとは思っていなかった蒼が、きょとんとした顔で自分を指さす。


「それくらい、働きなさいよ」

「や、でも……」

「子どもたちが見つける『お宝』のカギが、その辺のお店で売ってたりしたら、あとでがっかりするでしょう? 具体的なイメージとか置き場所とか送るから、ちゃんとしたものを作ってね?」

「……はぁい」

「さてと……そろそろ引き上げるか。椿、帰りは俺の車で送ってやるよ」

「ありがと、涼。助かるわ」


蒼が空になった皿を洗い、わたしが拭き、涼と愛華がバッグにしまう。
手早く片付けを終えると寝ている紫ちゃんを起こさないよう、静かに玄関へ。

そっと立ち去ろうとしていたら、紫ちゃんを寝かしつけていた紅さんが、慌てて見送りにやって来た。


「言うのが遅くなってしまったんですが、お忙しいのに会場デザインやフードのメニューを考えていただき、ありがとうございました」

「いえいえ。楽しい結婚式になるよう、頑張りますから!」

「思いついたことや、気づいたことがあれば、いつでも遠慮なく言ってくださいね」

「はい! あの、椿さん……」


紅さんは、にっこり笑って涼と愛華に大きく頷いて見せたが、わたしと目が合うと何かを言いかけ、ためらう様子を見せた。


「何か気になることでも?」


その時、その場では「これでいい」と思っても、あとから気になることが出て来るのは普通のこと。柔軟な変更に対応できなければ、真にクライアントの望むものは作れない。

ただ自分が表現したいものをデザインに投影するのではなく、クライアントが望むものを形にすることこそが、わたしの仕事だ。

遠慮なく思ったことを言ってほしいと促したが、紅さんは「気になるのは、結婚式のことではない」と首を振った。


「あの……雪柳部長は、元気ですか?」


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