二度目の結婚は、溺愛から始まる
負けず嫌い魂に火が点き、すっかり弱気も吹き飛んだわたしは、蓮にもらった小箱を開けた。
蓮は、数ある種類の中から、わたしがもっとも好きな三種類を選んでくれていた。
芸術品のような三粒のチョコレートをまず目で堪能。
深呼吸してから、一粒口へ放り込む。
(んーっ! 美味しすぎる……)
絶妙な甘さ、くちどけ、香り……すべてが完璧だ。
一個目で至福を感じ、二個目で飛び跳ね、走り回りたい衝動を覚え、三個目では……天国が垣間見えた。
梛には「挙動不審過ぎるだろ!」と突っ込まれたが、そんなものはスルーだ。
蓮の思惑どおりに、頬と一緒に緊張もすっかり緩んだところで、トランペットが有名な結婚行進曲を奏で始めた。
蔓薔薇のアーチを潜って登場した新郎新婦は、盛大な拍手と指笛に笑顔で応える。
蒼は、濃紺のセレモニースーツ。紅さんは、オフホワイトのスレンダーラインのドレス。
お揃いのデザインで作られたカラフルなブートニアとリストレットが、シンプルな衣装と対照的で、よく映える。
二人から少し離れて、緑川くんとベビードレスを着たごきげんの紫ちゃんを抱えた女性が続く。
拍手と祝福の声が降り注ぐ中、二人は会場を横切り、幹に白いリボンを巻かれた月桂樹の前に立ち、ゲストへ向けて一礼した。
幸い、月桂樹の花の時期は終わっていて、いまは瑞々しい葉を生い茂らせている。
月桂樹の花は「裏切り」という不穏な花言葉を持つが、葉のほうは「わたしは死ぬまで変わりません」が花言葉だ。
つまり、「永遠の愛の証」を表す。
蒼と紅さんは、すでに入籍しているということもあり、誓いの言葉と指輪の交換以外、結婚式らしいことはしない。
ケーキ入刀もファーストバイトも父親や母親への手紙もなし。
友人代表のスピーチもなし。
その代わり、ゲームやプロのパフォーマーによるマジックや大道芸、ゲスト間の投票で決めるベストドレッサー賞に、子ども向けの「猫」をテーマにしたスタンプラリーなど余興が目白押しだ。
ガーデンパラソル付きのテーブル席や木陰に置かれたベンチで、ゆったりと世界各国の料理を満喫しいてもいいし、会場のあちこちに置かれた「芸術作品」を鑑賞して歩いてもいい。木陰で昼寝をしてもかまわない。
会場にも、プログラムにも、料理にも。
いろんな楽しみ方ができるようにとの、二人の願いが込められている。