二度目の結婚は、溺愛から始まる
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梛と花梨は、祝福の言葉をかける人たちからなかなか解放されず、そのうち花梨が疲れた様子を見せ始めたため、小一時間ほどで会場を後にした。
素人でもいいから、誰かに手伝いをお願いしようかとも思ったが、梛が抜けた穴はなんと蓮が埋めてくれた。
もともと器用な蓮は、勘が良く、呑み込みが早い。
立ち姿が美しいので、ワインやビール、シャンパンを注ぐだけでも十分様になる。
そんな蓮が目立たないはずはなく、目の保養を求める女性たちが入れ替わり立ち替わり、ドリンクバーにやって来た。
しかも、彼女たちは少しでも長く蓮と会話をするために、「カクテル」を頼むので、わたしは休む間もなく大忙しに。
蓮は、爽やかな笑顔で受け答えしながらも、一線を引いて決して相手に踏み込ませず、それでいて機嫌を損ねない元営業の会話術を遺憾なく発揮。よっぽど、わたしよりもバーテンダーらしい。
しかし、横でせっせとカクテルを作るわたしは、複雑な気分だった。
いくら仕事だと自分に言い聞かせても、蓮がわたし以外の女性に微笑みかけ、優しい言葉をかけ、あからさまに誘惑される姿なんて、見たくない。
美しい色をしたカクテルを作り続けながら、わたしの胸の内はドロドロした色に染まっていた。
(蓮のこと、信用していないわけじゃないけど……イヤなものは、イヤ)
やっぱり、一緒に働くなんてできそうもない。
予定していた余興のすべてが滞りなく終わり、緑川くんが会をお開きにすると宣言したのは、十五時過ぎ。
手作りの式は、完璧ではなかったかもしれないけれど、帰っていくゲストはみんな笑顔だった。
最後のゲストが蔓薔薇のアーチの向こうへ消えるのを見届けてから、後に残った片付け要員で後始末をする。
レンタルしたものは業者へ引き渡し、残ったお酒は山分けにし、月桂樹のリボンを解けば、すっかり庭は元通りだ。
(終わった……)
夢から醒めたような気分で、溜息を吐く。
「おつかれさま、椿」
「おつかれ、愛華。そっちも終わった?」
「ええ。すっかり片づいたわ」
「先輩っ! もう終わり? 手伝うつもりだったのに……」
見送りを終えた後、蒼はスーツからジーンズにTシャツ姿へ着替えてから戻って来たが、ごみ一つ落ちていない庭を見てがっくり項垂れた。
「今日は、本当にありがとうございました。思い出に残る式にしていただいて、感謝しています。雪柳部長にもお手伝いいただいて、恐縮です」
蒼から少し遅れて戻って来た紅さんも礼儀正しくお礼を述べたが、蓮は迷惑そうな顔をした。