二度目の結婚は、溺愛から始まる
商談ならぬ、密談がまとまったのか、蓮と椎名さんはすっかり打ち解けた様子で、笑いながら戻って来た。
「二人とも、誕生日会にもいてくれるんだろう?」
「それが……県境にある温泉に泊まる予定なので、自分たちはこれでお暇させていただきます」
やんわりとお誘いを断る蓮に、椎名さんは大げさに嘆き、『KOKONOE』とのコラボが実現したら飲みに行くと約束させた。
「もう帰っちゃうの?」
わたしたちが帰ると聞いて、駐車場まで見送りに来たキョウカちゃんに、しょんぼりした顔で言われると胸が痛む。
「また遊びに来るわ」
「約束ね? 今度は将棋しようね?」
「練習しておく」
「椿ちゃんもSNSする? メッセージ送ってもいい?」
「もちろんよ! メルアドも交換しよっか」
「うんっ!」
キョウカちゃんは、スマホを休憩室に置いてきちゃったと言い、百合香の名刺の裏にかわいらしい字で名前と電話番号、アドレスにSNSのIDを書き込んでくれた。
「ありがとう。あとでメッセージ送るね?」
何気なく、手にした名刺に書かれた名前を見て、驚きのあまり声を失う。
「橘……椿香……?」
答えを求めるわたしに、百合香がふわりと微笑んだ。
「わたしが尊敬する女性のように……強く、優しく、思い遣りのある女性に育ってほしいと願って、一文字いただいたんです」