二度目の結婚は、溺愛から始まる
「今日は、ここまで連れて来てくれて……橘に会わせてくれて、ありがとう。言葉では言い尽くせないほど、感謝している」
「べつに……蓮のためにしたわけじゃ……」
「俺は何もしてやれないのに、椿はいつも俺のためにいろんなことをしてくれる。橘が言っていたように、強くて、優しくて、自分のことより人のことを優先する、俺にはもったいない女だと思っているよ」
「……そんなこと、ない。蓮こそ……いつだって完璧で、わたしにはもったいない人よ」
「完璧じゃないだろ。椿がいなかったら……今日は、これまでと同じように部屋で酔いつぶれて終わっていた」
これまで、蓮がどうやって今日という日を乗り越えてきたのかを知り、胸が痛んだ。
わたしには、瑠璃やジーノという理解者が傍にいてくれたが、蓮はひとりで痛みを押し殺し、耐えてきたのだ。
「わたしだって……蓮がいなかったら、何も考えないように忙しくしていたと思うわ。でも……これからは、思い出したくない日ではなく、忘れたくない日にしたかったの」
蓮は、湿った彼の髪を撫でるわたしの手を取り、軽く握りしめる。
「椿と過ごす毎日は、どれも忘れたくない日だ」
「わたしだって、そうよ。でも、今日はとりわけ『特別な日』にしたかったの。やり直すというわけじゃないけれど……新しい思い出で、上書きしたかったのよ」
「そうだな……これまでの人生で、今日ほどハラハラした日はなかった」
しみじみと呟く蓮を睨む。
「そういう意味じゃなくっ!」
「今日ほど……椿をイイ女だと思ったことは、なかった」
苛立ちは瞬時に消え、恥ずかしさに襲われて目を逸らした。
「聞き捨てならないんだけど。いままでは、ちがったの?」
照れ隠しの憎まれ口を叩くわたしに、意地悪なひとは「そうだな」と返す。
「いままでは、面白くて……」
「面白い?」
「……カワイイ女だと思っていた」
「……どうも」
「一緒にいて飽きることはないだろうから、ずっと傍にいてほしいと思っていた」
「……いまは?」