熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 

「ちょう助くん?」

「……け、」

「え?」

「……出てけ。出てけよっ! あっちにいけ!」


 だけど、そんな花の想いはちょう助には届かなかった。


「今すぐ出てけって、聞こえなかったのか! 俺は人に協力なんてしないからな!」


 それまでになく強い口調で言い放たれたちょう助の言葉に怯んでいるうちに、花の身体は強い風に押し戻されて、厨房の外へと締め出された。


「え……え? あれ? え……っ、ちょ、ちょう助くん!?」


 何が起きたのか、花は混乱せずにいられないほどすべてが一瞬の出来事だった。

 厨房は目の前にあるのに、入ろうとしても中へは入れない。

 それは、ちょう助の花に対する絶対的な拒絶で厨房の主であるちょう助の力によって中に入ることは愚か、ちょう助の顔を見ることさえ許されなくなってしまったのだ。

 
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