熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 


「どうしよう……」


 見えない壁の前で絶望した花は、呆然と立ち尽くした。

 よもやこんなことになろうとは思いもしない。


「ちょう助くん! お願い、開けて! どうしても、ちょう助くんの力が必要なの!」


 花は精一杯声を上げたが、心を閉ざしたちょう助には届かない。


(ど、どうしよう……。これじゃあ、虎之丞さんを満足させることなんて絶対にできないよ)


 絶望が、花の脳裏を駆け巡る。

 このままでは花は確実に、地獄行きが決定的なものとなる。


「……廊下で騒ぐな、騒々しい」


 そのとき、低く心地の良い声が花の耳に届いた。


「や、八雲さん……」


 現れたのは八雲だ。

 いつからそこにいたのか、着物の袖に両の手を入れた八雲は溜め息をひとつ零すと、床板を踏み鳴らしながら花のそばまでやってくる。

 
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