熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「ほ、ほんとにぽん太さんですか!?」
「いかにも。これなら誰も、わしがたぬきの付喪神だとは思わんじゃろ」
ぽん太の言うとおり、少し背は小さいような気もするが、今、目の前にいるぽん太は、どこからどう見ても人にしか見えなかった。
「わしはこうしてよく人に化け、現世に遊びに行くんじゃよ」
「え……でも、それならどうしてあのとき、サンビーチではたぬきの姿のままだったんですか?」
花が初めてぽん太と出会ったのは夜の熱海サンビーチの遊歩道だ。
あのときぽん太はモフモフのたぬきの成りをしており、突然話しかけられた花は、悪い夢でも見ているのかと慄いた。
「あのときは夜じゃったし、あんな寒い日に海を散歩しようなど、誰も思わんじゃろと思うておったんじゃ。人の姿に化けるよりも、たぬきでいたほうが気が楽じゃしの〜」
「そ、そういうものなんですか?」
フォッフォッと身体を揺らして笑ったぽん太は、「では」と編笠を頭に被る。