熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 


「まぁまぁ、もういいじゃろ。ちょう助も無事に納得したことじゃし、まずはここ熱海梅園から堪能するとしようかの」


 ふたりの間に流れる気まずい空気を切ったのは、仲介役のぽん太だ。

 花も咄嗟に「そうですね!」と場を明るくしようと試みたが、ちょう助は相変わらず眉根を寄せて斜め下を向いている。

 ──今は、一月も終わりに差し掛かる頃である。

 空気は冷たく乾燥していて、少しでも風が吹けば首を竦めたくなる季節だ。

 そのとき、三人の横を通り過ぎたカップルの女性が、クシュン!と可愛らしいクシャミをした。


「熱海梅園の梅はの、日本で一番早咲きの梅と言われとるんじゃ」


 彼女を気遣う彼氏を横目に、ぽん太が梅園の中を指差す。


「日本で一番、ですか?」

「ああ、そうじゃ。見頃は丁度一月から二月にかけてでの。毎年今の時期には梅まつりも開かれて、観光客もたくさんここ熱海を訪れるんじゃ」


 ぽん太に言われて改めて梅園内へと目を向けた花は、ほぅ……と感嘆した。

 今は平日の午後一時だ。

 けれど梅園には多くの人が訪れ賑わいを見せていて、入口付近には案内役らしいスタッフが立ち、忙しく動き回っている。


 
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