熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 


「どうじゃ、ちょう助。ここはわしの顔に免じて、折れてくれんかの」


 ぽん太が念を押すように、ちょう助に尋ねた。

 するとちょう助は、少々考え込んむ素振りを見せたあと、まだ幼さの残る目を静かに伏せた。


「ぽん太さんが、そこまで言うなら……わかったよ」


 渋々といった様子で答えたちょう助は、カーディガンのポケットへと両手を入れた。


「でも……今日だけだからな」

「あ、ありがとう! ちょう助くん!」


 反射的にパァッと表情を明るくした花は、思わず礼を口にした。


「別に、お前にお礼を言われる筋合いとかないんだけど」


 対してちょう助は毒を吐きながら、フイッとそっぽを向いてしまう。


(や、やらかした……)


 花は瞬時に軽率なことを言ったと反省したが、言ってから後悔しても後の祭りだ。

 しかし今は、これからちょう助も一緒に熱海観光へ出掛けられることが嬉しくてたまらなかった。

 
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