熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「きゃ……っ!!」
「──っ!」
そのときだ。花は廊下の角を曲がったところで、前から来た影とぶつかった。
直後、ガシャン!!と何かが割れる音がして、跳ねて広がったものが花の履いていた足袋を濡らした。
「あ、つ……っ!!」
床に転がったのは急須で、中には熱いお湯が入っていた。
咄嗟のことに花は短い悲鳴を上げたが、すぐに顔を上げて事故の相手を確認する。
「あ──!」
ぶつかった相手は八雲で、足元には八雲が運んでいただろう急須と湯呑み、そしてそれらが乗っていたお盆が転がっていた。
「す、すみませんっ。私、ぼーっとしていて……っ! や、火傷しませんでしたか!?」
花は青褪めた顔で八雲を見上げてから湯がかかっていないかを確認したが、八雲は険しい表情で花の腕を強く掴んだ。