熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 

「突然やってきたと思ったら、急に何を言い出すんだ」

「出過ぎた真似をしていることは百も承知です。でも……傘姫様の話を聞いて、傘姫様のために"今日という日"に何かできないかと改めて思ったんです」


 花の言葉を聞いた八雲の顔が、さらに険しいものへと変わっていく。


「だからと言って、ぽん太を傘姫の想い人に化けさせるなど馬鹿げている。そんなことをしたところで死んだ人間が帰ってくるわけでもないのに、傘姫の心を余計に痛めるだけだとは思わなかったのか!?」


 今度は強い口調で糾弾され、花は思わず肩を揺らして口を噤んだ。

 確かに八雲の言うとおり、根本的な解決になっていないことは承知の上だ。

 それでも傘姫の話を聞いたら、もう一度だけでも想い人に会わせてあげたいと思ったのだ。

 花にはそれだけの思いしかなく、傘姫の心を余計に痛めるなどということまで思い至らなかった。

 もしかしたら八雲の言うとおり、とんでもない提案だったのかもしれないと考えた花の顔が青褪める。

 
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