熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 

「し、失礼、します……」
 

 そうして自分を鼓舞した花は、意を決して足を前へと踏み出すと、八雲に言われたとおりに八雲の隣に腰を下ろした。

 板張りの床のひんやりとした感触が、熱くなった身体にはちょうど良い。

 八雲の部屋の縁側は広縁で、やはり回廊になっていた。

 二間続きの部屋を繋ぐように、ぐるりと伸びた縁側は今、八雲と花が座っているところだけ大きく窓が開いている。

 庭におろした足が少し心細く感じるのは、花が酷く緊張しているからだろう。

 屋外でもなく室内でもない縁側の曖昧な空間は、まるで今の花と八雲の関係を表しているようだった。


「それで……話とは?」


 沈黙を払うように口を開いたのは八雲だった。

 膝の上で拳を握りしめた花は、勇気を振り絞って話しを始める。

 
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