熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 

「本当に……大丈夫でしょうか?」


 不安を滲ませた花の瞳を見て、八雲が僅かに目を細める。


「相手は国宝ともなる付喪神様たちなのに……。デザートバイキングを提供して、ちゃんと受け入れてもらえるでしょうか?」


 改めて冷静になると、花は不安に押しつぶされそうになった。

 国宝である付喪神たちと、デザートバイキング。

 一歩離れて客観的に見れば、まるで相容れない、対極に位置するものにも思えてしまう。

 もしも花の不安が的中して、デザートバイキングのことを伝えた時点で突っぱねられたら、取り返しがつかなくなる。


「これで、薙光さんたちを怒らせるようなことになったら、つくもに迷惑を──」

「大丈夫だ」

「え……」

「怒らせたとしても、俺がどうにかする。だからお前は自分を信じて、いつもどおり精一杯自分がやるべきことをやればいい。お前はお前らしく、薙光たちをもてなすことだけを考えていろ」


 清々しいほど真っすぐで、力強い八雲の言葉に、花は目を見張って固まった。


「こちらが考えたおもてなしを、薙光たちが受け入れるかどうかは結局、やってみなければわからないことだろう?」


 言い終えて八雲は、ふっと顔を綻ばせる。

 八雲の穏やかな笑みを受け止めた花は、また自分の胸の音が高鳴るのを感じて唇を噛み締めた。


(どうしてだろう。今……誰よりも八雲さんに、大丈夫だと言われて安心してる自分がいる)


 思わず、膝の上で握りしめた花の拳に力がこもる。

 
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