熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「ありがとう、ございます。私……頑張ります」
それ以上、花は八雲の顔を見ていることができなくなって、手元へと視線を落とした。
今が夜で良かった。
昼間だったら──顔が赤くなっているのを八雲に気づかれてしまったに違いないと、花は心の中で安堵の息を吐く。
「あ、あと……。朝は、すみませんでした。私、何も知らずに色々と無神経なことばかり聞いてしまって……」
視線を下に落としたままで、花は今朝のやり取りの件に対する謝罪を口にした。
ぽん太たちは八雲は怒っていないと言っていたが、配慮に欠けた質問だったのは確かなのだ。
八雲の父が他界していることを知らなかったとはいえ、その父に薙光たちをもてなす方法を聞こうというのは無遠慮にもほどがあった。
「今朝も言ったが、別に気にするようなことではない」
「でも……」
「父が亡くなったのはもう、随分昔の話だ。それに今は逆に……話せて良かったとも思っている」
「え……」
思いもよらない八雲の言葉に、花が弾かれたように顔を上げれば八雲の穏やかな瞳と目があった。