メヌエット ~絵里加
32

海外の解放感なのか、二人きりの安心感なのか。

絵里加は、今までに感じたことのない欲望で 振向いて健吾の唇を求めてしまう。
 

「どうしたの。」

熱く 激しいキスの後、健吾がそっと言う。
 
「わからないの。絵里加、急にキスがしたくなったの。」

恥ずかしそうに俯いて、そっと言う絵里加。
 

「大丈夫。何も心配しないでいいよ。」


健吾の声に顔を上げて、もう一度唇を重ねる。




着替えた二人は、夕食前に少しビーチを散歩する。
 
「海、綺麗だね。江の島とは違うね。」

絵里加の手を引いて歩きながら、健吾が言う。
 
「そんなこと、江の島に失礼だよ。」

健吾を見上げて、絵里加が言う。

その可愛い顔に、健吾がフッと笑う。
 

「まあ、江の島も頑張っているからね。」
 
「そうだよ。ケンケンと絵里加の、初デートの場所だから。」

むきになって言う絵里加。

可愛くて、頭をそっと撫でてしまう。

絵里加は、口をすぼめて健吾を見上げる。
 

「キスしていい?」その唇に触れたくて、健吾は聞いてしまう。

絵里加も小さく頷く。

夕暮れのビーチは、人影も少なくて。

最初はそっと、軽く触れて。

でもやっぱり、熱いキスをしてしまう。
 


「絵里加ね、ケンケンのキス、好き。」

唇を離した絵里加が言う。
 
「いっぱいキスするよ。人がいてもね。」

頷く絵里加に、健吾はフッと笑って言う。
 


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