さよならが言えなくなるその前に
愛に抱かれて

際は投げられる




アパートまでの薄暗い道のり。




深夜を回って人通りはほとんどない。




「ふああ」



ゆうじは大きなあくびをした。



帰って早く寝よ。



最近は翔輝さんのアシより



クラブの警備に行くことが多くなって



正直 きつい。



ゆうじは背も小ちゃくて、顔も幼いから



舐められることが多い。



しかも、見た目の通りケンカも強くない。



つまり、イベントで暴れるやつ



ルールを守らないやつ



を摘み出す。力で制圧する。




それが主な仕事の



ブラアイの警備の役にはたたないのだ。






ゆうじは物心ついたときから



母親と親ひとり子ひとりで



裕福じゃないけど、




ひとことで言うなら、幸せに暮らしてた。



けど、中学校に入るころ



その母親が再婚した。



ゆうじは義父と上手くいかず



いつからか、殴られるようになって




どんどん暗くなったゆうじは



学校でもいじられるようになって…



どんどん どんどん



視界は曇って



息が苦しくなった。



…ある日



家を飛び出した。



家を飛び出したって



ゆうじには



どこにも、居場所なんてなくて



徘徊するように 




自分の外側で騒がしい街を彷徨っていた



そんな街で



ゆうじが出会ったのが…




翔輝だった。



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