さよならが言えなくなるその前に



白い陽射しを眩しく感じて



瞬きする。



「ん」



ゴツって固くて、頬が痛い。



え?



丸まった身体が、



温かい身体に、抱きしめられていることに



気づく。



いつもの自分の家で。



リビングに座り込んで眠っている私と…。



あ、嘘。



私、あのまま寝ちゃったの。



枕にしていたのは、あの子の胸で。 



見上げた先に



うつむきかげんの寝顔。



壁に持たれて、 



ずっと私を抱きしめていてくれてたの? 



フードが脱げて、顔があらわになってる。



鼻筋の通った高い鼻。



大きめの唇。



つむっていてもわかる



切れ長の目のライン。



キュって意思の強さも感じられる 



シャープな顎のライン。




すごいきれいな顔。




彫刻みたいに、きれいな顔



見とれてしまうくらいのイケメン。



寝起きの頭で、ぼーっと見ていたら。




パチ。



いつのまにか、起きていた彼と目があった。




やだ。



見とれていたのばれちゃう。




って、そうじゃなくて




これ、どういう状況?




ほんとに、何で?




なんで、ここにいるの?




昨日の不良と関係あるの?



あるなら、何?



え?



謝罪したらいいの?



どうするのが正解なの?



それに!



昨日、のぞき見してたような



怖いこと言ってなかった?




なんで見ず知らずの人が?




目的は何なの?




あなた誰なの?




言いたいことが、



言うべきことがまとまらなくて



プチパニックな頭の中。



とりあえず



「あの、何て言うか…







ありがとう?」




優香の口からでた答えは




一晩中



見ず知らずの私を慰めるために、




私のために



ここにいてくれたことに




感謝してしまった。




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