さよならが言えなくなるその前に



ていうか、きみ。



寝起きで



何そのポテンシャル。




肌なんかツルッツル。




やっぱり、切れ長の瞳は



下まぶたのラインが



きゅって締まっていて



やば。



かっこいい。



なに、芸能人?




若いよね。



いくつくらいだろう。



ジっ。



って、こっち見てる。



ちかっ。



やだ。



そんな凝視しないで。



何?



本人もなんでここにいるのか、



私は誰なんだって



思っていたりして。




薄茶色の瞳で、めっちゃ見てくる。




やだ。




私きっと目も腫れていて、



すっぴんで



すごい顔してるんだろうな。



パって、顔避けちゃう。



いや。



この子にどう見られようと



関係ないんだけど。



あまりにイケメンだから、つい。



彼の携帯が鳴る。



「あい。


ん。



わかった」



短い会話の後



こっちを振り返って



「帰る」



え。


うん。



立ち上がった彼は、



やっぱり180センチは超えてそう。



肩幅も広くて、 



160センチの私なんて



すっぽり



入っちゃいそう。



なんて、全然関係ないこと考えちゃって




玄関に向かう背中に



一応付いていく。



ほんと、何この状況。



よくわからないけど、もう



会うことはないよね?



漠然と考えていたら、



玄関先で彼が



思い出したように振り返った。



え?



私を見つめる薄茶色な瞳。



ジッと見るの…



クセ?



そんなことしてると、女の子みんなに



勘違いされちゃうぞ。



って思ってたら。



彼が



くしゃ。



私の髪の毛を撫でる。




くしゃくしゃ。



ぽかん。



見上げる私に




「またね」 



やっぱり、表情があまり動かない



彼はそう言って



振り返りもせず出て行く。













何?



はい?



彼が出て行った玄関に佇んで




自分の髪クシャって  



触ってしまう。



何だろ。




大丈夫?



って聞かれたみたいな感じ。




変な気分だよ。




私の肌から彼の残り香。










ん?



『またね』?


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