さよならが言えなくなるその前に


「そんなのって



何で」



焦って口にする優香に



「でかいケンカになる」



翔輝が言った。




「そんな…



え…



どれくらい?」



「わからない。



だから




もう、会えない」



翔輝が



翔輝が、そう




優香の目を見て言った。




何で



何言ってるの




翔輝は今日…



サヨナラ言いにきたの?



「どうするつもりなの…



襲われたから、



だから仕返しするの?」



それで、どんどんケンカが大きくなって



大変になって



会えなくなるの…?



そんな、そんなことなの…?



それが、そんなに大事なことなの?




「…ケンカなんか



しなくったっていいじゃん…」




翔輝にとっては、それが一番大事なの?




…あたしより?





翔輝は



あたしより、チームを選んだ。



そういうことなの?




翔輝は何も言わない。




黙って優香を見てる。




あの、くちびるの端をあげた表情で





うそ



嘘でしょ?



翔輝。




合図のように翔輝の携帯が鳴る。




翔輝は立ち上がる。




「翔輝は、いいの?




翔輝は




会えなくなって




それで、平気なの?」





追いすがるような優香の言葉にも




翔輝は




言った。





「会うのはこれが最後だ。




もう、関わらない。





…元気で」
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