さよならが言えなくなるその前に



「おつかれっす」



マンションのロビーでブラアイのメンバーたちが



頭を下げる。




「ああ、サンキュ」



そう言って、立ち去りかけた那智が



振り返って




「お前らも、絶対ひとりで


行動するんじゃねえぞ」



ひとこと付け加えた。



ボデイガードとして那智を送るくらいだから



ブラアイの中の武闘派のメンツばかりだが



今は誰も


安全じゃない。



…。



初代との面会も取り付けた



幹部会も招集した


後やんなきゃいけ無えことは…


エレベーターを降りた那智の前に



レミ。



那智の部屋の前。



座り込んでいるレミ。


「お前何やってんだっ!


バカなのか」


レミの腕を掴んで


急いで部屋に入れる。


那智はこれまでにないくらい



怖い顔。



「おまっ。


わかんねえのかっ!


襲われたら、どうすんだ!


何しに来てんだよ」


怒鳴りつけそうで、



あまりにキレすぎてやばいのか。


途中からは怒りを押し殺したように


逆に静かに言った。


「うん。



勝手に来て、ごめんね」



そう言いながら、レミは



那智のそばにくる。



よしよし。


見上げる高さの那智の頭を


よしよし。ってするみたいに


優しくさする。


「何やって…」


那智の驚いたようなかお。



「慰めにきたの。



那智さん


ずっと



傷ついた顔してるから」



レッドの中は



ずっと、ピリピリ空気が張り詰めて



その中で



みんなにハッパをかける那智さんの



厳しい声。



レミは



あんな那智さんのかお初めてみた。



ゆうじくんがやられて、


他にもたくさんやられた



やられたのは


本部のブラアイの中でも若い。



下っぱの子たちばかりだった。



ブラアイを仕切って



いつもみんなを怒って


世話焼いて



統率して



厳しいけど




1番みんなを大事にしてた那智さん。



那智さんが辛くないはずない。



那智が下を向く。


「…バカなんだな」


下を向いたまま手で顔を隠すようにした


那智さんが言う。



「そうだよ。


知らなかったの」


レミが笑う。


那智さんの腕が


レミの首根っこを捕まえるみたいに



レミを抱き寄せた。



レミの手は那智さんを抱きしめる。



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