さよならが言えなくなるその前に



「立花主任。時間です」



「はーい。今行くー」




タブレットを持って会議室に急ぐ。




得意先からの紹介で今度うちと




一緒にプロジェクトに関わる会社の




担当さんとの初顔合わせ。





主に物流を扱ってて、



小規模ながら海外との取引に強いと



評判なので




今回から協力してもらう予定になっている。



「こんにちは。



弊社の担当させて頂いております



…」




後輩の挨拶が続く。




え?



うそでしょ。



何やってるの…




え。




ほんとに?




…翔輝!?




頭というか、全部がフリーズして




何喋ったのか、自分がどうしたのか




何も覚えていない。




2年ぶりに見る翔輝は黒髪で




紺色のリーマンみたいなスーツ着て



いや、リーマンでいいのか。




え。翔輝がリーマン?




はああああ?




涼しい顔して





何仕事の話なんかしちゃってんの?




なに、何なの…





「それでは、今後よろしくお願いします。」





帰って…行くの?




何なの?




出そうだった涙が




引っ込んだわ!




まだ、会議室のイスに座ったまま




立ち上がれない優香。





「立花主任?




どうかしたんですか?」





そんな後輩の声を聞きながら




優香は立ち上がる。




優香の足はまだ震えているけれど、





何なの、どういうことなの…




このまま、何も言わずに帰るなんて




待ってよっっ。






バンっ。





優香は会議室のドアを開けた。



< 121 / 124 >

この作品をシェア

pagetop