さよならが言えなくなるその前に

ギャングスターな男☆




あれは



あの週末は何だったのか。



いまだにわからなくて。



からかわれた?



いや。




一晩抱っこしてくれて?




あー。わかんない。




まあ。きっともう会うことないよね。




仕事、仕事。





またね。




って…





…まさかね。





仕事が終わり。




優香は少しの残業を片付けて




オフィスを後にした。




会社のビルの正面を過ぎて、



歩いて帰宅する優香。



今日は同僚のみんなと帰宅時間が



ズレてしまったので



ひとり。



歩く優香の後ろから 



徐行して近づく車があった。



少し人気の無くなった通り。



優香の頭の中は、



今日の夕飯の献立考え中。



何も買って帰らなくて、大丈夫だよね。



卵、あったよね。



念のために買うかな。



あ。ゴマ無かった。



やっぱり、お店よらなきゃ。




キキー。



響いたブレーキ音。



え。




そう思ったときには、



真横にベンツの四駆が停まっていた。



街灯に照らされて



黒光りしている、縦長のごつい車。




ガチャ。



左ハンドルのその車の運転席と



後部座席から降りてきた男の子たちが



優香を一瞬で車内に引きずり込んだ。




訳が分からないまま。



車内にはもう一人いて、




優香は、二人に挟まれた



座席に押し込まれ、



顔を上げたときにはもう




車は発進していた。




え?



え?




心臓がパニックを起こしてる。



もちろん心の中も。


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