さよならが言えなくなるその前に



くしゃ。



翔輝が優香の髪をなでるように触って



「危なっかしいな」



困ったような表情で言った。








もう、やめてよ。



せっかく



我慢した涙が




こぼれちゃうじゃん。




ポンポン。って



優しい手が



優香をなぐさめる。














翔輝が



忘れ去られていた岸田を振り返って言う。




「どうする?



俺が連れて帰って



お仕置きしてやってもいいけど」




真顔で岸田を見下ろす翔輝の言葉に



「ひっつ」



顔面を青くして




怯えている岸田。




「…いい。」



優香はそう言った。



「そんなこと…



いいよ」



そう言って



優香は岸田の視線をとらえた。



「岸田さん…



もう、二度と来ないでください。



二度と。



私なんかより



…奥さんと向き合ってください




お願いします」



そう言って、




優香は頭を下げた。



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