さよならが言えなくなるその前に






身支度を整えた優香に



ベッドから眠そうな翔輝の声。



「…送ってこーか?」



起こしちゃった?




「いいよ。



電車で行くから」



そう言ったのに、



翔輝が




まだ、眠そうな顔して




玄関まで出てくる。




「帰りは…



迎えやる」




「いいよ。そんな、




自分で帰るし」



「…」




無言でジッと見てくる翔輝。



何か



寝起きだから?



心細そうな顔に見えるんですけど。




…無言の要求。



「…ここに帰ってくるよ?」




帰ってきていいんだよね?



っていう意味で



優香がそう言うと



「絶対?」



なんて、翔輝が



子供みたいにかわいく聞くから



「だって、まだ



ガラス直んないって」




優香がそう言うと



コクン。



って、翔輝がうなずいた。




やだ。



あからさまに



そんな嬉しそうな顔



しないでよ。



もーー。



ブンブン。振ってるしっぽが見えそうなくらい。



かわいすぎだろー。この子。



優香は



甘い空気を断ち切ろうとするみたいに




「じゃあ、言ってくるね」




そう言って、玄関のノブをまわそうとした。




でも、その優香の手は




ドアノブごと翔輝の手に捕まって




首に、翔輝のくちびるから



キス。




「ちょっ」



慌てて



振り返って



抗議しかけた優香の唇は





たやすく、翔輝のズルイくちびるに




捕まって




熱い舌で優香を、責める翔輝に





優香は



切れ切れに、やっと言う



「ん…。



はっ、ん。し、しょ



んん。



や、約束は?」




そんな優香に



翔輝は




優香のくちびるを捕らえたまま



「ざけんな。



舌くらい入れさせろよ」


 
そんなこと言って



たくましい腕の中で



ますます、深くキスするから



もう、



やだ。



身体にチカラ、



入らないよ。







さっきみたいに、



かわいくて



やっぱり年下男子だなーなんて



思ってたら




こんなやばいキスして…






わたしの気持ち煽って




いってらっしゃいって言うみたいに




玄関先で私を見送る翔輝に




心臓痛いくらい




ドキドキさせられてる。




わたし、



マジでやばいんですけど…。






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