さよならが言えなくなるその前に



ピンポーン。



チャイムが鳴った。




え?




だれ?



こんな時間に、



時刻は22時近い。


まさか…



岸田さん?



涙をぬぐって。



ドアのスコープから覗く。



え?



180センチくらいありそうな大きな男の子。



雨に濡れた


ダボっとしたグレイのパーカーで、



フードを目深に被って、



顔…見えない。



少しだけ痛んだような



明るめのほぼ金色のウエーブのかかった



髪の毛が覗いている。



下はデニムのジーンズ。



は?



だれ?



どっかと間違えている?



ピンポーン。



またチャイムが鳴る。


えー。



怖いんですけど、



怖いんですけど。



「立花優香さん」



少しハスキーな声。



は?




今、グレイのパーカーの子が言った?



何で、名前知ってるの。



知り合い、



じゃない…よね?



だれ?知り合いなの?



「立花優香さん」



大声。



ドンドンドン。



ドアを叩く。



「立花優香さん」



ちょ、ちょっと



そんな、大声で



近所の人が



あ。



あたしのばか。



慌てて



ドア



開けてしまった…。


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