さよならが言えなくなるその前に
頬がほてって
突然の告白に
心が落ち着かない帰り道。
ざわ。
道行く人の注目が集まった一角。
何?
気づいた優香も目を向けた。
ばたん。
数台の車が路肩に停められ、
数人のいかつい子たちが降りてくる。
車道をはさんだ反対側。
ビップのように、
開けられたドアから降りてきたのは、
翔輝。
何て偶然。
みんなすっごい、ガラ悪いし。
それに
遠くからみる翔輝は…
知らないヒトみたいだった。
黒いスーツ姿で
いつもみたいに飄々とした
少年ぽさなんて
微塵も無くて
心なしか目つきも違って見えて
殺伐とした空気の中。
人を引き連れて歩く姿は
違う世界の
知らないオトコみたいで
怖く見えた。
優香がぼんやり見ていると
優香の耳にまわりの声が聞こえてきた。
「なに
あれ、ブラアイじゃん。
こわ」
「翔輝さんじゃない?
やば。
あいかわらず、かっこよすぎだし」
「見れるなんて、うちら超ラッキー」
「何で、
ブラアイが、ロイヤルに来てんの?
レッドガンの店でしょ」
「え。知らないの。
レッドガンはだいぶ前にブラアイの
傘下に入ったんだよ。
事実上潰されるか、傘下に入るか。
一択だったらしいけど」
「あんとき、やばかったよね。
ブラアイめちゃくちゃしてたし」
「こわいよねー」
「でも、一時期に比べたら、最近
ブラアイ大人しいよな。」
「そりゃあ、ここまで勢力広げたら、
もう潰すとこないんだろ」
「このまま、大人しくしててほしいよな」
「街が平和だわな」
…心臓が鈍い音してる。
〝違う世界の
知らないオトコみたいだった。〝
って、みたいだったじゃないじゃん。
あのひとは
本当に、
わたしとは
違う世界の
オトコでしょ?