さよならが言えなくなるその前に
ふたりとも、ほろ酔いで
お店を後にする。
「もう一軒行かない」
三島が言う。
「んー。そうだねー」
今日って三島。
別に話があったわけじゃないのかな
ただ、飲みたかっただけ?
こう見えて、ストレス溜まってんのかな。
エースだもんね。
「私はいいけど。
明日大丈夫なの?」
ちょうど、大声で騒いでる
大学生らしき集団の男の子たちと
すれ違いそうになる。
スッて、さりげなく
優香を自分の内側に入れるように
立つ三島。
「三島
モテるだろうにねぇ」
しみじみ言う優香。
「は?急に何」
「あれかな。
彼女できないっていうか
作らない感じ?
今は仕事が忙しいからとか?」
「何でだよ。」
って、ちょっと不服そうな顔の三島。
「褒めてるんだよ?」
何で怒るの。
「お前さあ。
ほんと、おれに興味ないよね」
「何でよ。
そんなことないし」
そういう優香に
「昔っから、そうじゃん。
この前だって、彼女いるとか思ってるし
おれ、彼女いたのなんて
もう1年以上前だし。」
「えー、そうなの
何か三島いそうじゃん。」
優香が笑って言うのに
三島は不服そう。
「何よー。三島。
三島ならすぐ彼女できるよー
エリートだし、優しいし
気がきくし
さわやかイケメンだし」
優香が顔に当たる風が気持ちよくて
流れるように喋っていると
「おまえは?」
って言うから
「なに?
何がよ」
笑って答える優香に
「はー」
三島がため息ついた。
「お前
ハッキリ言わないと
わからないみたいだから
言うけど。
おれなんかどう?」
え
「何言ってんの?三島」
酔ってんの?
「好きだって言ってんだよ。」
真剣な表情の三島。
「この鈍感。
全然気づかないんだもんな。
おれ、ずっとお前が好きなんだよ。
本気で…
結婚前提で付き合いたいって思ってる。
…考えてみてよ。」
ちょっと顔赤くして
三島が言った。