さよならが言えなくなるその前に
「それってさ。
レミ、ラッキーじゃん」
レッドのフロアで
鳴り響くEDMの中
仲良いメンバーで話すレミたち。
仲間うちでは、だれとやったとか
付き合ったとか
もちろんみんな筒抜け。
「遊ばれてたとしてもいいじゃん。
那智さんだよ?
ワンナイでも、他に立候補したがる子
いっぱいいるって」
別の子も言う。
「そうだよ。
ウチなんか正直
レミのことずるいなって思うよ。
翔輝さんには妹みたいに可愛がられてて
翔輝さん、翔輝さんって言ってたくせに
那智さんといい関係になってるって
何なの?」
「お前、上手くやりすぎじゃない?」
友達のぶっちゃけ意見。
たしかに…
「そうだよ。レミ。
あんた気をつけなよ。
翔輝さんファンと那智さんファンに!」
そっか…そうだよね。
レミが現実チョップをくらったそのとき
ポン。
肩に手が置かれた。
「こいつ借りるよ。」
那智さんっ。
那智さんの後ろには翔輝さんが立っていた。
今来たのかな。
那智の腕の中に入れられて
連れてかれるレミ。
バウンス系のリズムに飛び跳ねる
その人垣をかきわける。
…那智さん。
口から心臓が飛び出そう。
…那智さん。
レミは、那智さんといると
いつも
ドキドキが止まらなくて
壊れそうになるんだよ。
ばん。
事務所のドアが閉まる。
那智さんと2人きりの空間。
デスクのイスに座りながら那智が言う。
「お前何、バックれてんだよ。」
バックれてって、
レミは…
こわくて…
ドキン。ドキン。
那智さんの中で
レミは合格?不合格?
合格?不合格?
どっちだったの?
ドキンドキン。
引きつった顔で
固まっているレミを見て
「何、お前
後悔してんの?」
那智が言った。
後悔なんて
「してない!」レミが言うと
那智は何だかわからない表情で
「じゃあ、こっちこいよ」
そう言って
自分のひざを叩いた。
え。
え。
今、ここで?
そういうこと?
レミはおそるおそる近づくけど
「那智さん?
みんな、知ってるよ。レミたちが
ここ入ったの」
「だから?」
だからって…
だって、レミまだ那智さんの気持ちが…
えーっと、
そうだ。
「翔輝さんだって見て」
たから、ここに来るかも
って言おうとしたのに
那智の強引な腕に手を取られて
レミは那智の膝のうえ。
「お前ムカつくな」
何でぇ?
それに、そんなこと言ったのに
那智さんはレミにキスした。
那智の指が
レミのカーデのボタンを外す
…那智さん。
レミ今そんな、ラブい気分じゃないよ。
でも、いやって言ったら
どうなるの?
もう、おしまい?
レミ…
那智さんがレミのこと…
どう思ってるか、知りたいよ。
「…ちさん。
那智さんっ」
レミが那智にキスする。
たぶん全然上手じゃない、下手なキスだけど
那智さんが好きだよぉって
思い込めて
レミはキスをして
「那智さん。
…レミとしたかった?」
そう聞いた。
那智はちょっと笑って
「1回じゃ満足できねえよ」
そう言って
レミをもっと引き寄せる。
そのとき…
那智さんから
香水のいい匂いがした。
那智さんのじゃない
香水の匂いが
那智さんの肌から。
そつか
レミは身体の相性には
いちおう合格?
したけど。
レミは
レミは
その他大勢の
那智さんのおもちゃになったんだ