さよならが言えなくなるその前に

運命の男




今日は久しぶりに美香ちゃんとランチ。



駅前で待ち合わせ。



最近、あったかくなってきてたけど




今日はいちだんと暖かいかも…




優香は少し息を吐いて




手のひらで照りつけてくる太陽を遮った。




強すぎるヒカリにまぶたの裏が




白く感じるほど



目がくらみそうになる。




なんか、ちょっときついかも…




最近あんまり眠れてないからかな。




暑くなってきたからかな。



そんな優香の視界に



ロータリーの先の青々とした大きな木を



取り囲むような円形のベンチが




見えた。



あそこって…。





ポンポンっ。



ちょうど待ち合わせ場所に着いた



美香ちゃんが



慌てたように優香の腕に手をやった。



「優香


どうしたの?!



大丈夫?」



そんな美香ちゃんの言葉に



「え?



あ、美香ちゃん。



なに?」



訳の分からない表情の優香。



「何って」



「そんな青白い顔して…



何かあったの?



「優香…



今にも泣き出しそうな顔してるよ」







土曜の夜



三島とごはんを食べた。



店を出て



人が多い駅までの道を




2人で歩く。




「いいよ。駅まで送る」



そう言ってくれる三島は



やっぱり優しいやつで



お店でも優香を気遣って



和ませて



三島みたいなひとと



結婚したらきっと、幸せになれるのかも








優香は、しみじみそう思う。



途中にある大きな公園に



スケボーで走り回っている若い子たち



音楽かけて集団で踊っているダンサー。




座り込んで飲んでいる子たち



そんな他人を素通りして



優香の目は見つけてしまう。



公園の遊歩道を横切るように歩いていた



優香たちの斜め前方のほうから



歩いてくる翔輝たちを。



ていうか何なのこれ



神様のいたずら?



三島といるときに翔輝と会うって



もしかして三島と翔輝のテリトリー



が同じとか?



前もクラブレッドの近くの店だったし



意外。



ってそんなこと考えてる場合じゃない



のんきか。



なんなの、これ



いや。だってわたしの気持ちはもう



なんて、思っているまに



翔輝が…








翔輝が、女の子連れてる…。


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