エリート御曹司が花嫁にご指名です
 連れてこられた五十三階のスイートルーム。高層ビルや東京タワーが下に見える。

 ダイニングルームの広い空間に、会議ができそうなくらいのどっしりしたテーブルや、ラグジュアリーなソファセット。

 どこに座ればいいのか困るほど大きい。
 
 しかし悩むほどのこともなく、私は窓を背に腰を下ろさせられた。
 
 桜宮専務は、L字型の短い方にドカッと着座した。膝同士が触れそうなほどすぐ近くで、冷静ではいられなくなりそうだ。
 
 モゾッとお尻を横にずらす。
 
 桜宮専務の膝に触れない位置に離れてホッとしたところで、顔を上げる余裕が少し出てきた。

「お見合いをぶち壊しにするなんて、嫌味なこと、やめてください。私、怒っているんですよ?」

 俺の花嫁だなんて、信じない。

「嫌味なことか?」

 桜宮専務はソファに背を預け、長い足を組み、鼻で「ふん」笑う。

「俺は嫌味や嫌がらせで、見合いの場所に乗り込んだわけじゃない。あの男に君が取られるのを阻止するためだ」
「ですから、意味がわかりません。阻止するために『俺の花嫁』だなんて適当なことを言って。どうしてくれるんです? もう白石さんは会ってくれないでしょう」

 地団太を踏みたい心境だった。

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